2021年度介護報酬改定 訪問介護はどう変わるか?
~感染症や災害への対応力強化とICT活用による業務負担軽減を促進~
介護保険がスタートしてから21年。今回で11回目となる介護報酬改定は、全体の改定率が+0.70%となりました。
コロナ禍以前の2019年の年末、社会保険審議会介護保険部会がまとめた「介護保険制度の見直しに関する意見」では、「地域共生社会の実現」に向かってさまざまな提案がなされていましたが、コロナ禍でソーシャル・ディスタンスが求められた現在、思うように進んでいない状況です。
結果として今改正は、経営的に厳しい状況におかれた介護事業所を継続させる意味合いが濃い内容となりました。
~全サービス共通の改定事項と訪問介護に関連する内容まとめ~
感染症対策の強化
委員会の開催、指針の整備、研修の実施、訓練の実施等を義務づけ(経過措置3年)
業務継続に向けた取り組みの強化(BCPの策定)
感染症や災害が発生した際の業務継続に向けた計画等の策定、研修の実施、訓練の実施等(経過措置3年)
「LIFE」情報の収集・活用とPDCAサイクルの促進
「LIFE」へのデーター提出とフィードバックの活用によるPDCAサイクルの推進・ケアの質の向上を推奨
人員配置基準における両立支援への配慮
育児や介護により短時間勤務を行っている常勤職員について、週30時間以上勤務している場合は「常勤」扱いが可能に。
育児・介護休業取得の際に非常勤職員による代替職員の確保を進め、休業中の常勤職員と同等の資質を持つ複数の非常勤職員を常勤扱いとして認めることが可能に。
ハラスメント対策の強化
すべての介護事業者に適切なハラスメント対策を求める
会議や多職種連携におけるICTの活用
運営基準上必要な会議において、利用者が参加しないものについてはテレビ電話等の活用を認める(利用者を交えた会議も同意が得られれば実施可)
利用者への説明・同意に係る見直し
押印欄を削除し、原則としてデーターでの対応が可能に
員数の記載や変更届の明確化
運営規定や重要事項説明書に記載する従業員の「員数」について、「○○人以上」と記載することが可能に。さらに変更の届出は年に1回で良いことを明確化
記録の保存等に係る見直し
データーでの保存を原則認めることとし、その範囲を明確化する
運営規定の掲示に係る見直し
運営規定等の重要規定等の重要事項について、事業所の掲示だけでなく、閲覧可能なファイル等で備え置くことが可能に
高齢者虐待防止の推進
虐待の発生又はその再発防止をするための委員会の開催、指針の整備、研修の実施、担当者を定めることを義務づけ(経過措置3年)
地域区分の見直し
隣接地域すべての地域区分が当該地域より高いまたは低い地域など、一定の条件を満たす地域において、当該地域の地域区分の設定値から隣接地域の地域区分の中で一番低い区分までの範囲内で選択できることとする特例措置を適用
~訪問介護の基本報酬は微増にとどまり認知症専門ケア加算が創設へ~
ほとんどすべてのサービスにおいて基本報酬がプラスとなった今改定ですが、訪問介護に限ってみると、微増にとどまりました。
新規の加算については、認知症専門ケア加算が創設されました。
一日につき、認知症ケア加算(Ⅰ)が3単位、同(Ⅱ)が4単位となっています。
取得要件としては日常生活自立度Ⅲ以上の利用者が全体の100分の50以上であることや、認知症介護実践リーダー研修修了者の配置が求められています。
専門研修についてはeラーニング等を活用し、受講しやすい環境整備を行っていくことが示されました。
~看取り期の2時間ルールの見直し~
これまでは、訪問介護で1回のケアに入ると次は2時間空けなければ、再度、ケアしにくい報酬体系になっていました。
しかしこの「2時間ルール」と言われるものが、看取り期のケースに限って緩和されることとなりました。
つまり、看取り期は一日のうちで何回かのケアに入る必要があるため、2時間空けずとも基本報酬が算定しやすくなりました。
訪問介護あっての「在宅介護」!
在宅介護の基本は訪問介護です。
もちろんデイサービス、ショートステイ、居宅介護支援、訪問看護、リハビリテーションも重要です。
しかし、在宅介護を支えている基本部分は、ヘルパーだと思いますので、この報酬改定の下、頑張っていきます!