介護保険制度において、訪問系のサービスはいくつか設定されています。
当然、それぞれには意義・目的があり、それぞれの専門性において自立支援に資する目的で利用されます。
その中で訪問介護は利用者の日常生活を支援する要のサービスともいわれています。
「7訂 介護支援専門員基本テキスト(長寿社会開発センター)」には、訪問介護の意義・目的」として次のように記載されています。
- 個人が培ってきた生活習慣や文化、価値観を尊重し、生活基盤を整える。
- 生活の自立性の拡大を図る(自立支援)。
- 生きることの喜び・意味を見出し、自己実現を図る。
- 予防的な対処により生活の質(QOL)を維持する。
- 状態の変化を発見し、多職種へとつなぐ。
これらの意味するところを考えてみましょう!
個人が培ってきた生活習慣や文化、価値観を尊重し、生活基盤を整える
訪問介護は自宅にて提供されるサービスであることから、利用者個人の今までの生活をより尊重した支援が求められます。
特に生活援助は今まで本人や家族によって行われてきたことを支援することから、その方法やこだわりなどをある程度反映した支援が求められることもあります。
訪問介護を提供するうえでのルールもありますので、それらのルールを満たすことが前提ですが、可能な限りそれまでの生活の基盤を維持する観点が強く求められます。
生活の自立性の拡大を図る
単に利用者の活動(ADL、IADL)を向上させるのみならず、生活全体の質(QOL)を重視した支援が求められます。
訪問介護が目指す自立支援は、他のサービスによってもたらされた効果を、日常生活という場面において、より相乗的に高めるためにも重要な社会資源ともいえます。
生きることの喜び・意味を見出し、自己実現を図る
人は参加としての役割生きがいを感じながら生活していくことで、生きることの喜びや実感を味わうことができるといわれています。
A.H.マズローは人の欲求を5段階説で唱えました。
「生理的欲求」「安心安全の欲求」「所属と愛情の欲求」「自尊と尊厳の欲求」
人のためにある自分、人から求められる存在としての実感が人を意欲的にさせると言われています。
これらの欲求が満たされることで、人は「自己実現」に至るのです。
訪問介護はこれらのすべての段階において意義・目的を持ちながら支援していくことになります。
予防的な対処により生活の質(QOL)を維持する
訪問介護は日常生活を支援することで疾患の予防・改善を図ります。
訪問介護は、規則的な生活を継続できるように支援することで、疾患の改善、悪化予防につなげるという役割を持ちます。
そこに専門性があるといえます。
状態の変化を発見し、多職種へつなぐ
すべての支援は利用者の目標に向かっておこなわれます。
目標はかなりの時間をかけて達成するものや比較的短期間で達成可能なものなど様々です。
したがって、モニタリングは常に行われる必要があります。
さらに、それらの変化は専門的な見地から見ないと気付かない場合もあります。
訪問介護においては、サービス提供の都度、生活上の変化に気が付くことが求められます。
そしてその変化がどのような性質のものかを判断し、対処すべき多職種への情報提供を行うことになります。
このように、訪問介護には多くの専門性が求められています。
これらの対応が可能になるためには、全てのホームヘルパーに、利用者や家族との関係性を構築するための技術やコミュニケーションの技術などが備わっていることが条件になります。
そこにも高度な専門性を見出すことができます。
生活援助においても訪問介護は単なる家事代行ではなく、専門的見地から様々な生活行為を支援するところに大きな違いがあるといえます。